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INTERVIEWインタビュー

組織が活性化する! 社員のモチベーションが高まる「4タイプ別」マネジメント

古川武士ふるかわ・たけし
習慣化コンサルティング株式会社代表取締役/米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー

近年、女性の活躍促進やLGBTQ、外国人、障がい者にも差別なく、働きやすく、能力を発揮できる環境をつくるために、「ダイバーシティ」への理解が広まっている。しかし、同じ属性にある従業員のなかでも、突き詰めれば個性や価値観はまったく異なり、それぞれに違った強みや弱みもある。いまの時代は、そうした一人ひとりの従業員の個性や特性を踏まえた、パフォーマンスを最大化するためのマネジメントが求められている。多くの企業でコンサルティングを手がける古川武士氏に、多様な個性を踏まえたマネジメントのあり方について解説してもらった。

構成/岩川悟 取材・文/吉田大悟 写真/石塚雅人

あらゆる個性の「強み」を活かすことが、高いモチベーションを生み出す

——古川さんは個人と組織の働き方について、多くの企業でコンサルティングを行っています。そのなかで、いま求められているマネジメントのあり方について、どのように考えていますか?

古川武士:マネジメントを実際にしている人や興味がある方であれば、ピーター・F・ドラッカー著の『マネジメント』という名著を読んだことがあるかもしれません。そのなかでは、「弱みよりも強みを活かす」ことの重要性が語られています。わたしもまた、マネジメントにおいて、「部下の強みを活かした適材適所の働き方」こそがもっともモチベーション高く、チームのパフォーマンスも高い働き方になると考えています。

多くの従業員は、仕事を通じて「誰かに認めてもらいたい」という「承認欲求」を持っています。その承認欲求がもっとも満たされるのは、「弱みや苦手を克服したとき」以上に、「自分の強みを発揮できたとき」ではないでしょうか。

これまで、日本における大半の企業のマネジメントは、「弱み」を見つけ出して、それを克服させようとする傾向がありました。個人の能力になんらかの欠点があった場合、飛び抜けている能力を活かすよりも、その欠点をなくすほうに力を注ぎ、チームのメンバーが同じ仕事を一定のレベルでできるよう整えてきたのです。

しかし、弱みを克服しても、それによって発揮できるパフォーマンスは人並みです。それこそ、弱みをなくそうと努力しても克服できず、人並み以下のレベルに甘んじてしまうこともあったでしょう。それは部下にとって苦痛以外のなにものでもなく、劣等感に苛まれるだけです。当然、モチベーションが上がるはずもありません。

それよりも、マネージャーが部下の強みを見出し、称賛し、どんどん活かせるように、チーム内での役割分担や仕事の配分を行ったらどうでしょうか?

事務作業が苦手で営業活動が得意な人には営業に出てもらい、外まわりより事務作業が性に合っている人には内勤の仕事を任せていくほうが、チームのパフォーマンスを高いレベルに持っていける可能性が高まります。さらに、そのほうが部下も仕事を楽しく感じられ、自己効用感・自己肯定感が高まり、承認欲求が満たされるのです。

——その適材適所の実現には、マネージャーの部下に対する深い理解が必要とされそうです。

古川武士:部下との深いコミュニケーションは大前提です。部下それぞれの強みや弱みだけでなく、「どういう仕事がしたいのか」「なにに喜びを見出すのか」といったパーソナルな情報を知らなければ、適材適所は判断し得ません。そのためには、日常的なコミュニケーションも大事ですが、「1on1ミーティング」という枠組みが効果的だと考えます。

「1on1ミーティング」は、マネージャーが部下のパーソナリティを理解し、その部下のパフォーマンスアップや成長促進、課題解決を図るために行われる1対1の面談です。一般的に企業で行われている、半期・通期の査定面談などとは異なり、日常の業務をフォローアップするためのミーティングですから、実施企業の考え方によって実施のスパンは異なります。隔週に1回の企業もあれば、四半期に1回の企業もあるでしょう。わたしが代表を務める会社では、期間を定めず必要と考えたときに随時行う体制を取っています。

一般的な面談は、どうしても業務報告会のようになりがちですが、1on1ミーティングは部下を理解しサポートすることが目的ですから、初期段階では雑談を通じてマネージャーと部下の関係性と相互理解に時間を費やし、次第に部下を理解するための「傾聴」がメインとなっていきます。そうして部下のパーソナリティや考えを知ることで、マネジメントの質を高め、一人ひとりの部下が最大限にパフォーマンスを発揮できる環境をつくり出すのです。

「童話マトリックス」でタイプの傾向をつかむ

——そう考えると、部署に配属されたばかりのマネージャーや、これまで業務上の会話しかしてこなかったマネージャーが、部下への理解に基づくマネジメントを行うのは困難かもしれません。

古川武士:やはり、コミュニケーションの積み重ねは重要になります。しかし、部下のパーソナリティの理解をサポートするために、「ストレングスファインダー」(米国ギャラップ社が提供する、強みを発見する自己分析ツール)などを活用している企業もあります。ただし、これらのツールには実用性に欠ける部分もあります。強み、弱み、適性、性格などを精度高く分析でき、じっくりと異動やキャリアパスを検討するにはいいのですが、現場のマネジメントに活用するには分類やデータが細か過ぎて情報量が多いため、覚えていることが難しく、判断もしづらいのです。そこで、もっと手軽に指標となる程度の分析ツールがほしいと考え、わたしが開発したのが「童話マトリックス」というタイプ分類です。

「童話マトリックス」は縦軸を「行動タイプ」、横軸を「動機タイプ」とした四象限マトリックスで性格や適性を4つのタイプに分類したものです。もちろん、人間は4タイプで完全に理解できるほど単純ではありませんが、「動機」の源泉と実際の「行動」の傾向を把握すれば、仕事における強みや弱み、指向性はおおよそ見えてくるでしょう。

言葉で多くを語るより、実際にやってもらうことで説得力が高まると思います。わたしの会社が用意した以下のサイトでタイプを診断することが可能です。

■習慣化コンサルティング 性格タイプ別習慣術 無料診断サイト

https://www.syuukanka.com/analysis/

——このタイプ別診断を、どのように実際のマネジメントに活用するのでしょうか?

古川武士:上記のタイプ別診断を実際にやってみて、それぞれのタイプごとの特性を読んでください。そこでまず意識してほしいのは、「人それぞれ特性は異なる」ということです。例えば、行動タイプが短期集中型の「うさぎ」で、動機タイプが快楽追求型の「キリギリス」である「うさギリス」の場合、「熱しやすく冷めやすいが、ワクワクすることにパワーを発揮する」傾向があります。

その性格から、緊急案件や短納期の仕事が得意で、行動特性として期限内に終わらせる自信があるし、動機の観点でもヒヤヒヤ感がモチベーションにつながるようなタイプなのです。

その真逆のタイプとして、行動タイプが長期分散型の「かめ」で、動機タイプがリスク回避型の「アリ」である「かめアリ」は、「計画的にコツコツ継続し、ミスなく狂いなく進める」ことが得意です。

そんな性格の「かめアリ」に緊急案件や短納期の案件を任せると、ハイリスクで計画を練る余裕もないのでモチベーションはガタ落ちします。行動特性として「得意ではない」し、動機の点でも「やりたくない」のです。

一方、システムの保守管理などのような黙々とこなす長期的なルーティンワークに「かめアリ」はやりがいを感じますが、「うさギリス」はまったく興味が湧かないのでモチベーションが下がってしまいます。

それぞれ、まったく特性が異なることがおわかりいただけると思います。モチベーションとパフォーマンスの観点から「適材適所」を考えたとき、このふたつのタイプ特性を理解していれば、十把一絡げに同じ仕事を任せようとはならないでしょう。タイプと相反する仕事を与えてしまえば、自己肯定感や自己効用感を得ることができず、最悪の場合は離職してしまうことも考えられます。

仕事である以上、ときに「嫌な仕事」や「向いてない仕事」もやらざるを得ません。しかし、業務の振り分けや、プロジェクトへのアサインで人選の余地があるのなら、こうしたタイプを把握してマネジメントをすることで、それぞれの部下にモチベーション高くパフォーマンスを発揮してもらい、組織を活性化することができるのです。

異なる「タイプ」の存在を知ることが、対人ストレスを緩和する

——マネジメント以外の面でも、「童話マトリックス」のタイプ別診断が生み出すメリットはありますか?

古川武士:わたしが行う企業向けのコンサルティングでは、実際にタイプ別診断を活用してチームビルディングなども行っています。同じチームのなかで仕事をしていても、「どうしてあの人は、あんな態度を取ったのだろう」とか、「どうしてあんなことをするのだろう?」と、相手の考えが理解できないシーンはたくさんあるはずです。

対人関係におけるストレスや衝突の原因のひとつは、この「相手の考えていることがわからない」という不安感にあります。しかし、チームでタイプ別診断を行うと、「この人ってこんな考え方をしていたのか」「自分とは異なるものさしを持っているのだな」ということが端的にわかり、心理的なストレスを軽減することができます。そして、違いを受け入れることで、衝突よりも互いに補い合おうとする意識が生まれていきます。

互いに補い合える関係性がチームに生まれれば、居場所としての安心感が生まれ、また承認欲求も満たされ、働きやすい環境をつくることができます。そんな環境でそれぞれの部下が自分の強みを活かし、適材適所の活躍をすることで、組織は最大限に活性化するのです。

古川武士ふるかわ・たけし
習慣化コンサルティング株式会社代表取締役/米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー

1977年、大阪府生まれ。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約5万人のビジネスパーソンの育成と1万人以上の個人コンサルティングの経験から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、2007年に、日本で唯一の習慣化をテーマにした習慣化コンサルティング株式会社を設立する。オリジナルの習慣化理論・技術を基に、個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援の事業を開始。企業向けには、仕事の生産性を高める「高密度仕事術」を実施する。政府主導で行なわれている、「働き方改革」への取り組みとして多くの企業からオファーが絶えない。

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古川武士
古川武士ふるかわ・たけし
習慣化コンサルティング株式会社代表取締役/米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー

1977年、大阪府生まれ。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約5万人のビジネスパーソンの育成と1万人以上の個人コンサルティングの経験から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、2007年に、日本で唯一の習慣化をテーマにした習慣化コンサルティング株式会社を設立する。オリジナルの習慣化理論・技術を基に、個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援の事業を開始。企業向けには、仕事の生産性を高める「高密度仕事術」を実施する。政府主導で行なわれている、「働き方改革」への取り組みとして多くの企業からオファーが絶えない。

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